閉店  浜勝五日市店 (はまかつ) 

    とんかつ専門店。店内は、広く明るい。席はテーブルのみ、50席ぐらいはありそう。それでも、昼時夕飯時は入り口で待たされることがある。最近は、とんかつ専門店というよりは、とんかつのファミレスといったイメージが濃くなってきた。駐車場は広く、台数も充分に確保されているが、公道にでるのがちょっと難しい。ローダウンの車は特に注意が必要とのこと。

    広島市佐伯区藤垂園1-19
    082-943-9277
    開店時間:11:00-24:00
    定休日:無休
    ※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、開店時間や定休日が変更されている可能性があります。
    駐車場:有り


    もう一言
    この場を借りて、古き良き時代の浜勝を懐かしんで、悦に入ってみたいと思う。

    昔の浜勝は良かった。貧乏学生の救世主だった。全ての定食で、ご飯、みそ汁、キャベツ、ぶらぶら漬けがお代わり自由。事実上の食べ放題である。まぁ、今でもそうだけど。

    一番安いチキンかつ定食でも780円と高価ではあった。でも、当時のチキンカツは、かつ3枚というトンデモナイボリュームで、際限なく食べることができた。食いだめにもってこいである。今では、チキンかつ定食を頼んでも1枚しか出てこない。初めて、1枚のチキンかつが出てきたときは、新しいサービスなのかと思ったほどだ。1枚目を食べ終わったときに、次の1枚が揚げたての状態で運ばれてくるのだと、信じて疑わなかった。でも、何分待っても次のカツは出てこなかった。とっても寂しかった。

    昔は、そんなチキンかつ定食を死ぬほど食べた。たまに贅沢をして、830円のチキンチーズかつを食べた。これは2枚だった。初めてロースカツ定食1050円を食べたときは、感動のあまりご飯を7杯食べてしまった。でも、自慢だけど自己最高記録は9杯だ。カツを全部食べても食べ足りなかったときは、お茶と漬け物でお茶漬けを食べたこともあった。隣の席のおじいさんが奇異な目で見てたけど、それが心地よかったものだ。

    浜勝では、ごはんはおひつに入って出てくる。ご飯のお代わりを頼むと、「何杯ですか?」と聞いてくる。通常であれば、2杯とか3杯とか答えるのだが、私は「おひつに入るだけ持ってきて」と答えたものだ。でも、店員は変な顔をすることなく、入るだけ持ってきてくれた。優しかった。

    十年ほど昔の米不足の年、浜勝はご飯の食べ放題を止めようとはしなかった。米の質は落ちたが、食べ放題は止めなかった。苦肉の策で考え出された麦入りご飯は、予想に反した人気で、その後も定番商品になった。浜勝の決めゼリフである「キャベツは千切りですか?角切りですか?」に「ご飯は麦入りですか?麦なしですか?」という仲間が加わったのだ。ちなみに、麦なしを頼むときは、「飯は白で」と頼むのが通である。

    最近、とあるページで「浜勝の定理」と呼ばれる論文を読んだ。ご飯一杯で、とんかつ何切れを消費するかを表すものだ。

    「おかずがm切れあり、そのときn杯のご飯が食べたい。そのときnはmの公約数でなければならない。」

    つまり、とんかつが8切れあった場合、食べることの出来るご飯は、1,2,4,8杯のいずれかになる。男なら一度は試してみたいn=8。これこそが浜勝である。まだ浜勝魂を持つ者がいたのだ。なんだか嬉しくなった。

    浜勝では、キャベツも重要なファクターである。カツをたらふく食べるなら、野菜もそれなりにとらなくてはならない。浜勝では、季節に応じて、4種類のドレッシングを出していた。春は青じそ、夏は鷹の爪、秋はしょうが、冬はだいだい。いつも、瓶いっぱいにドレッシングを詰めて、食卓に持ってきてくれていた。思う存分使ってくださいという、心遣いだろう。

    私のお気に入りは鷹の爪で、夏場はキャベツを沢山食べたものだ。酷いときは、食べ過ぎて、とうとうドレッシングのお代わりまでしたほどである。ドレッシングのお代わりを告げたときの、店員の顔は今でも忘れることが出来ない。

    「有料道路の通行券でコーヒーを、無料でサービスいたしております。道路に投げ捨てられる通行券が減り、街並みが今以上に美しくなることが、私たち浜勝の願いです。」

    往年の浜勝フリークなら、このメッセージに覚えがあるはずだ。浜勝のメニュー表には上記のような一文が記載されていたのだ。

    私はこのコーヒーサービスを知ってから、通行券をひたすら集めた。集めすぎて200枚を超えたこともあった。私は通行券でパンパンになった財布を片手に、片時も浜勝のコトを忘れることがなかった。そうやって、常日頃から浜勝に心を寄せていたのである。バカである。でも、単なるバカではなかった。浜勝バカだった。

    だが、今ではこのサービスに関する記載はなくなっている。浜勝の願いはどこへ行っちゃったのだろうか。

    今の浜勝は、浜勝ではない。最近は、昔の浜勝が懐かしすぎて、浜勝に行けなくなってしまった。悲しいものである。(2003.2)