廿日市の、これ以上はないほどの隠れた場所にある料理店。地産地消が流行り始める前からそれを実践していて、地元の食材を生かした会席料理が味わえる。店舗は、古い蔵を改装していて、それが店名にも繁栄されている。店内は、純粋な和の様式で、個室のみ5部屋ある。部屋からは小さな中庭が望める。
昼も夜もコースの料理のみ。季節に応じた料理が用意されている。それぞれの個室にスタッフが料理を一品ずつ運んでくれる。ただ、無為に運んでくるだけではなく、いろいろと料理の話をしてくれるし、スタッフからも距離を保ちつつ適度な話題をふってくれる。
基本的には予約が好ましい。昼の7900円と10000円、夜の8900円と12000円は、必ず予約が必要とのこと。
店は西広島バイパスから少し外れた場所にある。距離的には少しだけれど、そこは入り組んだ住宅街に位置し、偶然に訪れることは皆無の立地条件。まぁ、古い蔵を改装したと言うし、こういうシチュエーションは当然なのかもね。
そんなシチュエーションに圧倒されつつ、玄関をくぐると、店の方がスッと現れてきて、部屋へと案内してくれる。その手際の良さに違和感を感じるのは、私の先入観念なのでしょう。ここは民家ではなく、訪れる客をもてなす飲食店。ついうっかりすると、そのコトを忘れそうになってしまう。丁寧な接客は当然のことなんだよね。
そうして、案内された部屋で席に着き、まずはビール。そのビールを飲む前に、食前酒でミカン酒を頂く。柑橘系のさっぱり感が嬉しいな。その後、ビールを飲みながら前菜を頂く。唐墨、牡蠣、ナマコ、数の子、うーんビールよりもお酒が飲みたいな。と言うことで、すかさず日本酒に切替。
切り替えた日本酒はどれも広島地酒。どちらかというと、旨味の日本酒が多い。私は旨味の強い日本酒で旨い肴を食べるのが苦手なので、ちょっとツライ。この料理にはもっと控えめな酒の方が私好みだなぁ。などと文句を言いつつ、お酒のお代わり。いや、この酒美味しいんだよ。
その後、蟹だんごの吸い物、タチウオの刺身、鯛の刺身、鰹の刺身、シマアジの刺身、サワラとアワビの石焼き、タコと白菜の煮物、牛肉のみそ焼き、ホタテと蕪のなます、穴子飯、アイス。と際限なく料理の登場。特に穴子が旨い。ついつい3杯お代わりしてしまった。
食事の途中、ちょっと席を立ち、店内をうろついてみると、意外に狭いことに気がつく。上手に空間を使っている印象。廊下や部屋から覗くことの出来る中庭は小さいながらも美しくまとまっていて、好感度が高い。隙のないもてなしに、ちょっとしたあざとさは感じるけれど、そんなの問題ないぐらいに楽しかった。(2006.12)