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たぶん
Copyright 2003-2010 GOKANBASHI WATARU. たぶん たぶん、何もなかったんですよ。私は何も見なかったし、何も聞いてない。すべては気のせいだったハズなんですよ。だってそうでしょ。あり得るはずがないんだもん。幽霊なんて。 第一、ソレって夏のモノでしょう。冬に出てくるなんて卑怯なんですよ。本来なら、夏の暑い時期、納涼を堪能させてくれるために出てくるモンなんでしょ。生臭い匂いと共に、火の玉を伴って、ひゅ〜どろどろどろって効果音を奏でながら出てくるのでしょ。いや、だからって夏でも出て欲しくないですよ。こんなコト書いてるからって、「じゃぁ、夏にまた来るよ」なんて言わないでくださいよ。って、私は一体誰に向かって言ってるんだろう。 ともかく、私感じちゃったんです。って、こう書くとなんだか卑猥な連想を促してしまいますね。でも、感じちゃったんだからしょうがない。感じた場所は変なトコじゃなくて第六感。英語で言うとシックスセンスです。あぁ、こっちも少し紛らわしい。 まぁ、それはともかく、私の視界の隅に何者かが居たような気がしたのです。深夜、誰も居ない職場で、何かの気配を感じちゃったんです。しかも天井からガタンと音までしちゃいました。そう、しちゃったんですよ。全然期待してなかったのに、音が聞こえちゃったんですよ。きっと家鳴りですよね。絶対にラップ音なんかじゃありませんよね。鉄筋コンクリートでも家鳴りはするハズなんです。家鳴りはどこでも聞こえてくるモンなんですよ。学校でも、職場でも、家でも、電車でも、車でも、遊園地でも、動物園でも、するったらするんですよっ。 そういえば、幽霊って恐がりな人のトコに出てくるんですよね。私は幽霊なんか怖くありません。どうか、他の恐がりな人を探してください。私はあなたが求めているような人間ではないのです。お門違いです。買いかぶらないでください。 第一、あなたのその根性はひねくれてませんか。わざわざ怖がってくれる人を選んで出てくることはないじゃないですか。それとも、怖がってくれない人は嫌なんですか。それはいけませんよ。人生において、嫌な人と付き合わなければならないなんてコトはよくある話です。ちょっと怖がってくれないからって毛嫌いしてたら、成長できませんよ。ほら、食わず嫌いって言葉があるでしょ。あれと同じなんですよ。思い切って出ていってごらんなさい。案外いいヤツかもしれません。そうすることで人間の幅も広がるってモンです。って、もう人間じゃないのでしたね。ごめんなさい。 あぁ、だから私は見てないんですって。ほら、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」って言うじゃないですか。きっとソレだったんですよ。尾花だったんですよ。冬の風に吹かれて揺れているススキだったんですよ。深夜のオフィスにススキが茂っていてもいいじゃないですか。季節を感じ取ることが出来る仕事場なのです。情緒溢れているのです。春は桜、夏はひまわりが植えられるのです。そこには幽霊の入り込む余地なんて一切ないのです。だから、私が目撃した白っぽい影とか、くぐもった人の声とかは全てススキだったんですよ。たぶん…… 2001年01月1日 |