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君たちが居なくても
 
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君たちが居なくても

 「雪の朝 二の字二の字の 下駄のあと」

 いいですね。雪の雰囲気がビシバシと伝わってきます。きっと丹波の冬は厳しいのでしょうね。昔はそんな雪深い中も下駄で歩いてたのでしょう。私なんぞは凍えあがって、家から一歩も出なくなっちゃうかもしれません。

 私みたいな人間は、雪の上の二の字なんて一生見ることはないでしょうね。こんなヤツには良い俳句なんて絶対に作れません。でも、家の中にいても似たような光景を見るコトができるんですよ。いや、そんな光景を見たからといって、上記のような俳句が作れるワケないですけどね。私には俳句を詠む才能自体がないのですから。

 まぁ、ともかく、家の中にもそこらじゅうに跡があるんです。雪じゃなくて障子なんですけどね。

 どうしてでしょうかね。猫と子供っていう生き物は真新しい障子紙を見ると穴を開けたくなるようです。子供は指に唾を付けて、ぐりぐりと穴を開けます。さながら壁に耳あり障子に目あり状態です。きっと、その穴から向こう側を覗こうって腹なんでしょうね。別に障子の向こうで密談がとり行われてるワケでもないし、誰かが隠し事をしてるワケでもありません。なのに、なんで穴を開けたがるのでしょうか。確かに、私も昔は障子に穴を開けまくってました。一体何が私をそんな行為に駆り立てていたのでしょうか。全然覚えていません。まぁ、忘れっぽいのでしょうがないです。

 でも、もっと不可思議なのは猫です。ヤツらは何を求めて障子を破るのでしょうか。爪とぎには不向きかと思われます。マーキングとも思えません。きっと、ヤツらの遺伝子には「障子紙を見たらとりあえず破れ」という古来からの宿命が書き込まれているに違いありません。そうに決まってます。

 かくして、昨年私が張り替えた障子紙も儚い命となってしまったのです。昨年と言っても10日ほど前です。トンデモナイ短命だったのです。

 濡れ雑巾で古い障子紙をこすり落とし、ツンッとした匂いをさせる糊を片手に、しわが出ないように気を使って、カッターを駆使して貼った障子紙達よ。君たちは今どこにいるんだい。そっちは良いところかい。寒くないかい。私のコトは気にしなくてもいいよ。私は君たちが居なくても何とかやっていける決心が付きました。

 「障子紙 ニャーの字ニャーの字の 猫のあと」

 字余り。

2001年01月6日

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