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ホタテイカ
 
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ホタテイカ

「ホタテイカってなんだろ」

全ては、友人のその一言から始まった。ホタテイカである。コイツは何バカなコトを言っているんだ。というのが、その場に居合わせた全員の統一見解だったと思う。でも、それは、ソイツのゆび指した先を見て崩れ去った。その先には、「ホタテイカはいりました」と書かれた品書きが、壁に張り出されていたのだ。

そこは居酒屋。私は初めて訪れたのだけれど、仲間の一人がここの常連で、是非ともここで飲もうと連れてきてくれたのだ。その常連くんも、ホタテイカは食べた事がないという。いったい、ホタテイカとは何者なのだろうか。

そこで、仲間の一人が、ケータイでホタテイカを検索してくれた。最近は、ケータイからも検索エンジン利用が出来るようになって便利である。我々は、その友人に全てを任せて、話を別にそらして酒を飲み、食う。ただ、ケータイを駆使する友人だけが、必至に指を動かしている。そうして、刺身や天ぷらをさんざん食い尽くした頃、ケータイの友人が結果を報告してくれる。そのケータイは便利だけど、お前、何も食べてないじゃないか。便利になった代わりに何か失ってないか。

ケータイでの検索結果は、ホタテイカはホタテとイカであるとのことだった。ホタテとイカと野菜の炒め物。ホタテとイカの餃子。ホタテとイカの和え物。なるほど、それはそうだ。ホタテイカは、ホタテとイカのコラボレーション。それは当たり前のことである。ケータイで検索するまでもなく、普通の食べ物なのだ。と結論づけようとしたら、一人が反論した。「ホタテイカはいりました」というコトは、それは純粋な「ホタテイカ」と言う名前を持つ食材が入荷したことではないかと。うん、それはそうだな。みんな酔っぱらいなので、新しい意見が出れば、すぐに同意してしまう。

こうなるとホタテイカの正体が気になってしょうがない。ホタテイカである。ホタテ貝のような頭を持つイカなのであろうか。それともホタテのような味をもつイカなのであろうか。そんな想像を語り合っていると、酒の勢いもあるのかあらぬ妄想が繰り広げられてゆく。

ホタ・テイカという名のメキシコ原産の野菜ではないかと言う者がいる。確かに、テイカという語感が、なんとなくメキシコっぽいけれど。そんな野菜の入荷を、居酒屋でわざわざ張り出すようなことはないと思う。さらには、ホタテとは帆立。つまり、自らの頭部を船の帆の様に立てて泳ぐイカでないかとの意見も出てきた。と言う事は、そのイカは帆に風を受けて進むのだろうか。あっという間に天敵に襲われて、生き残れないような気がする。

そんな酔っぱらいの激論を交わしていたら、その中の一人が建設的な意見を出す、注文してみればいいじゃないか。うん、それはそうだ。と全員が納得して、早速ホタテイカを注文してみた。注文を聞きに来たお姉さんは、少し変な顔をして、戻ってゆく。まぁ、先ほどから怪しげな会話を繰り広げていたのでしょうがない。

お姉さんが帰ってすぐに、居酒屋の大将が、今日のは新鮮だからサッと茹でたのをそのまま食べるのが美味しいよと声を掛けてくれた。もちろん、全員がそれに同意。そうして、きっとイカだろうから酒の方が合うのじゃないかと、日本酒の注文を出す。中には、ゆっくり味わってみたいからと、急いでトイレを済ます者までいた。みんな、ホタテイカに興味津々である。

そうして、大将自らが茹でたてのホタテイカを持ってきてくれる。皿からは湯気が立ち、その湯気の元には美味しそうなホタルイカ。大将はにこやかに、塩茹でしてあるからそのままでも美味しいよと言う。しばしの沈黙の後、やっとのコトで一人が「これがホタテイカか」と大将に聞く。すると、「うんホタルイカだよ」と返ってくる。そこで、例の壁掛けのお品書きをゆび指して大将に問いかける。大将は「ホタテ」の文字に初めて気がついたように、大して違いはないじゃない。と、軽く笑って奥に消えていった。

いや、ぜんぜん違うと思う。

2008年04月13日

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