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広島のお好み焼き
Copyright 2003-2021 GOKANBASHI WATARU. 広島のお好み焼き その日は、友人と一緒に、お好み焼き屋で飲んでいた。この店は、お好み焼きだけではなく、酒にあう一品料理にも取りそろえが多い。酒を飲むにはもってこいの店である。例えば、ゲソの塩焼きを注文すると、鉄板の上で焼かれたゲソがアルミホイルに乗せられて出てくる。強火の鉄板でほどよく火の通ったゲソは、塩加減もほどよく、熱々だが半焼け状態で、ビールに良くあう。 そんなゲソをつまみながら、私と友人はくだらない話に興じていた。くだらない話ほど酒に良くあう話はない。後日、何を話したか覚えていないのが欠点だが、そんな欠点はどうでもよい。酒が美味しく飲めればそれでよい。 しかし、それにも限界がある。さすがに、肴なしだと酒は飲みにくい。我々は、ゲソが無くなるやいなや、砂ずりの塩焼きとチーズ焼きを注文した。本当は、もっと早めに頼むべきだったのだが、くだらない話に気を取られていて、忘れていたのだ。 ぽっかりと時間が空いてしまった。テーブルの上にはビールしかない。肴もなければ、話題も切れている。私は、何か良い話はないかと、記憶の引き出しを探してみる。しかし良い話題は見つからない。ただ、ビールが消費されてゆくのみ。なんだか勿体ない時間だな、と思っていると、友人がポツリと語りはじめた。最近気になることがあるらしい。 友人によると、最近、お好み焼きが変なのだという。出張で広島県外に出かけると、広島風お好み焼きについて聞かれることがあるそうだ。どこの店が美味しいかとか、お勧めの店を教えてくれとか、そういった内容の話らしい。 友人はそんな質問に、いつも違和感を感じている。お好み焼きは、お好み焼きだ。広島風と呼ばれると、気持ちが悪い。いつから、広島風お好み焼きなどという言葉が出来てしまったのか。ちょっと変じゃないか、と言う。私は大きく頷き、友人に同意をした。 そこに砂ずりが運ばれてきた。これがまた旨い。塩と胡椒だけで焼かれた砂ずりは、焼きたてのうちに食べるのが良い。火が通りすぎると、まったく美味しくなくなる。砂ずりは、噛めば噛むほど味が出てきて、これもビールにあう。ゴリゴリとした食感は、モノを喰らっている気分にさせられる。我々は、ひとときお好み焼きのことを忘れ、砂ずりとビールに興じた。 舌を満たすと、思考は、お好み焼きに戻る。 広島風お好み焼きという言葉を耳にするようになったのは、ここ数年のコトだと思う。広島焼きという言葉も同様だ。きっと、関東あたりで広島のお好み焼きが流行り始めた頃に出てきたのではないだろうか。はじめてその言葉を聞いたときには、言いしれぬ違和感があった。しかし、最近ではすっかり浸透し、最初ほどの違和感は感じなくなってきている。 私はその考えを友人に話してみた。やはり、友人も似たような意見を持っているようだった。友人は更に、”風”の意味について、その考えを語ってくれた。 名詞の後ろに”風”が付く場合、それに似たようなとか、そんな雰囲気の、などといった意味になるそうだ。つまり、広島風お好み焼きとは、広島のお好み焼きに似たモノと言うことになる。広島のお好み焼きの雰囲気が味わえるモノとも言える。そこには、インド風カレーとか、地中海風バイキングなどといったモノと同種のいかがわしさがある。オレらが普段食べているお好み焼きは、広島風などというニセモノなんかじゃないんだよな。友人はそう締めくくった。 締めくくったところで、今度はチーズ焼きの登場である。これはチーズをタマゴで挟み焼きにしたもので、トロリとしたチーズがしっかり焼けたタマゴに絡まって、やはりビールに合う。我々は、口をハフハフさせながら、チーズ焼きをほおばり、ビールをゴクリと飲み干した。おばちゃん、ビール2杯おかわり。ついでに肉玉うどんも2枚。 でも、私は違和感の原因が、”風”の意味だけにあるとは思えない。そこには広島の誇りがあるのだ。広島風お好み焼きの裏には、広島風ではないお好み焼きの存在がある。おそらく、関西のお好み焼きであろう。まず、関西ありきの思考回路なのだ。広島は、その派生として取り扱われているのだ。何とも歯痒いことである。 もっとも最近は、広島風お好み焼きに対して、関西風もしくは大阪風お好み焼きという表現も目立ってきている。これに関しては、関西の人たちも苦々しい思いをしているのではないだろうか。 そんなワケで、声を大にして言いたい。広島では、広島風お好み焼きなんて食べない。広島には、お好み焼きしかないのだ。我々はそう結論付け、お互いに広島風を駆逐してゆこうと誓い合った。そのコトをことさら大げさに宣言をして、乾杯をしてみた。気分はお好み焼きを救う救世主である。 と、そこへお好み焼きが運ばれてきた。おばちゃんは愛想良く、広島風おまちどう、と声を掛けてゆく。本当は、どうでも良いことなのかもしれない。 2003年03月1日 |