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夢の続き
 
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夢の続き

 キスをする夢を見た。いや、それは本当に夢だったのだろうか。そのキスは夢であることを疑いたくなるほどに、明確な感触を残している。もちろん今も。

 夢の中で私は観覧車の中にいた。観覧車は非常に大きく、高所が苦手な私にはちょっと高すぎる。でも景色はとても綺麗だった。そこは山の上。観覧車は常緑樹が広がる山の中腹に建てられていたのだ。眼下に広がる緑はどこまでも遠く、果てしなく小さく続いていて、やがて別の山脈へとけ込んでいる。その山脈には、雄々しく立派な山々が並ぶ。それは鬱陶しくなるほど永遠に並んでいる。その山々も遠くなるに従って、霞が多くなりぼやける。そして霞はそのまま雲へ繋がり、空へと伸びてゆく。トンデモナイ場所だ。普通、こんなトコロに観覧車は作らないだろう。

 彼女はその景色に背を向けて私の目の前に立っていた。私はその肩に手を掛け、身をぐいっと引き寄せる。それに呼応するかのように、彼女は私の背中へ手を回す。その隙間は一気に狭まり、ゼロ距離となる。彼女の吐息が私の胸を湿らす。暖かい。私はゆっくりと、彼女の唇に顔を近づけてゆく。とても柔らかかった。

 包容も口づけも静かに、激しく続いてゆく。彼女の左腕は私の腰を抱き、右腕は左肩にかけられている。口は唇と舌のコミュニケーションを挑んできた。私も同調し彼女を強く求める。すると彼女は更に私を求めてきた。彼女は私の下唇を強く吸う。それは、まるでキスマークを作るような強い吸い付きだ。私の唇は不格好に伸びて、彼女の口の中へ吸い込まれてゆく。

 そこでいきなり目が覚めた。私はいつものベットに寝ている。もちろん一人きりだ。急な目覚めだからだろうか、目が開かない。でも、私は自分が目覚めていることも、自分の部屋にいることもちゃんと分かった。いつも通りの朝だ。ただいつもと違っているのは、未だにキスをしていることだけ。そう、私の下唇は夢の中と同じように、誰かとキスをしているのだ。

 私は混乱する。何が起こっているのか分からない。そんな私の戸惑いを察したのか、キスは突然逃げるように終わった。しかし、私の左肩にかけられた腕はまだ残っている。私は必死にもがき、その腕をつかもうとするが、するりと逃げられる。その腕はそのまま布団の中へと消え去り、気配を消した。赤いマニキュアをした白い指が印象的だった。でも不思議なことに、私の目は閉じられたままなのだ。

 私は現状を確認しようと目を開けてみる。しかし、私の目は歪んだ映像を送るだけ。まるで他人の目を借りているような感じだ。視界の至る所に線香花火のような火花も見える。そのせいだからだろうか、それともヤッパリ誰もいないのだろうか、どうやってもそこに人の姿を確認することは出来なかった。

 今まで私は何度かキスをする夢を見てきた。目覚めた後、キスの感触が残っていることもあった。しかし目が覚めてまでキスをしていた経験はない。しかも肩に腕を回されていたのだ。もし、あのままキスの甘さに身を預けていたらどうなったのであろうか。そう考えると怖くなってくる。このことは私の欲求不満が生み出した幻想だということにしておこう。その方がいくらか仕合わせだ。

初筆:2001年12月9日
加筆:2004年02月7日

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