五日市ランチ暫定ロゴ。暫定ではないロゴがいつ出来るのかは不明。
 メインコンテンツ
  カテゴリ別

  地域別

  50音別

  駐車場

 サブコンテンツ
  五日市Twitter

  掲示板

  徒然なるままに

  五ログ

  ブックマーク

 説明・紹介
  このサイトについて

  きくぢっち

  五観橋わたる

 新着情報
  丸亀製麺 廿日市店
       (2010.9.4)
  讃岐屋 楽々園店
       (2010.9.4)
  讃岐うどん処
       (2010.9.4)
  のんき亭
       (2010.8.8)
  恵美
       (2010.7.28)
  Vasanta
       (2010.7.18)
  なおき
       (2010.7.11)
  旬菜亭たか
       (2010.7.3)
  磯乃瀬
       (2010.6.27)
  一起
       (2010.6.14)

RSS

 サイト内検索



足が炊きたて
 
Copyright 2003-2010 GOKANBASHI WATARU.

足が炊きたて

 その店は繁華街から少し外れたところにあった。街灯は少なく、人通りも多くない。しかも店の入り口が狭く、看板やのれんも地味で目立ちにくいものを使っている。全体的に暗い雰囲気。外からは、店が開いているのかどうかさえも良く分からない。これでは、どうぞそのまま通り過ぎてくださいと言っているようなものだ。こんなので商売がやっていけるのであろうか。

 私はいらぬ心配をしながら、のれんをくぐる。と同時に、海鮮の良い匂いが私の鼻をくすぐっていった。いい匂いだ。私の胃袋は一気に空腹へと導かれ、キュッと締め付けるように私へ訴えかけてくる。これは早く食べ物を与えてやらないと、何をしでかすか分からない。私は急いで友人を捜し始める。友人達が先に来ているはずなのだ。

 グループで食事をするときは、遅れて行くものではない。僅か30分の遅刻でも、その差は大きい。先人達が酒豪なら、ビール3〜4杯分のリードをとられてしまう。酷いときには、すでに日本酒を飲んでいることもある。うかつには遅刻できない。この日もそうだった。私が席に着いたときには、満腹と酔っぱらいの雰囲気が場を支配し、出遅れを実感させられた。

 友人達は、ちょっと広めの小上がりに陣取っていた。テーブルの上には七厘が置かれ、網の上には海の幸、山の幸が贅沢に並べられている。殻付きの牡蠣は自身のエキスをグツグツさせながら、強い薫りを放っている。その隣では、マイタケが炭火の火力に身をよじらせている。鯛の皮はこんがりと縮み上がり、身はしっとりほろほろ。カボチャは炙られることで、より鮮やかになっている。更にはアワビとマツタケまでもが、その場をにぎわせているではないか。そして、案の定、冷酒の空瓶も転がっている。こいつら、私が店を探して歩き回っている間、こんなに良いモノを食べていたのか。ゆるせん。

 私はビールによる乾杯を手短にすませると、手頃な食べ物を片っ端からかたづける。そして、追加のビールと高そうな食材も注文する。早く元を取らなければ、大損だ。

 しかし、友人達はそんな私に気も止めず、激論を交わしている。私はそれを良いことに、一人で黙々と食べ続ける。ついでに、お酒の追加もする。もちろん高い酒だ。と、そこで友人の一人が話しかけてきた。

 「おい、お前もそう思うだろう」

 なんのコトであろうか。私は会話に参加していなかったので、流れが読めない。すると、別の友人が説明をしてくれた。

 その友人によると、足の匂いは炊きたてのご飯の匂いに似ていると言うのである。また、汗をかいたあとの足は糠の匂いも彷彿させるそうだ。更に別の友人によると、靴下を脱いだ後のほかほか加減が、炊きたてのご飯をそそらせるとのこと。真夏は靴下を脱ぐたびに、炊きたてのご飯を連想してしまうのだそうだ。

 なんとも情けない。大のおとなが激論を交わしているかと思えば、そんな幼稚な話だったのか。と、そこへ注文しておいた燗酒が出てきた。私は酒を注ぎ、一口飲んで、ため息をつく。酒自体は旨い。新潟の酒はスッキリとしていて好きだ。こういう酒を人肌で飲む贅沢がよい。でも、今日は環境が悪すぎる。周りを見渡すと、大の男達が靴下を脱いで、自分の足を嗅いでいる。これでは、旨い酒も不味くなる。

 もちろん、私は足とご飯が同じ匂いだとは思わない。そんな馬鹿げた話がある物か。しかし、その場では「足とご飯は同じ匂いである」派が多数を占めていた。いや、あろう事か反対派は私一人だったのだ。

 友人達は調子に乗って、独自の理論を展開する。欧米人は肉をよく食べるから、その体臭はとっても臭い。これと同様に、日本人は主食にお米を食べているから、体臭がそれに近いモノになるとのこと。特に足は第二の心臓とも呼ばれて、血液が沢山集まるから、それが顕著なのだと言う。

 私はそんな戯言には騙されないぞ。

 そんな私に対して、友人達は「だったら試しに匂ってみろよ」と曰う。いいかげんにしろ。ただでさえ最悪の環境の中で食事をしているのだ。足の匂いを嗅いでしまったら、食欲が完全に消え失せてしまうのは明白。誰が匂いを嗅ぐものか。

 結局、私は最後までその意見に賛同することはなかった。もちろん、足の匂いを嗅ぐこともしない。私は異端児の烙印を押され、頑固者呼ばわりされることとなる。なんとも釈然としない。日本全国1億3千万人にアンケートをとれば、本当の異端児がどちらであるかは明白だ。お前らの仲間だと思われたくない。私はそう捨てぜりふを残して、その場を去った……

 数日後、私はなにげに足の匂いをかいでみた。そこはかとなく、炊きたてのご飯の匂いがしたような気がした。

初筆:2001年10月21日
加筆:2004年10月11日

目次へ戻る