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殺してやりたい
Copyright 2003-2010 GOKANBASHI WATARU. 殺してやりたい 今、殺してやりたいほど憎いヤツがいる。ヤツは、私をこんな酷い目に遭わしておいて、今はもうどこにもいない。どんなに仕返しをしてやろうと思っても、ヤツはすでに手の届かないところへ行ってしまったのだ。悔しくて仕方がない。こんなコトならば、昨日のうちに、私の手でとどめを刺してやれば良かった。と、後悔の念が抑えきれない。 昨晩の私は、とにかく酷いヤツだったのだ。ヤツは昨晩、トンデモナイ事をしでかし、今日の私にそのツケを押しつけてきやがった。ホント、叶うならば殺してやりたい気分だ。 今日は朝から、眠いし、頭が痛いし、気分が悪いし、胃が重い。でも、財布は軽い。ヤツが昨日、あんな遅くまで起きていなければ、私は寝不足にならずにすんだはずだ。輝かしい朝日を浴びて、爽やかな目覚めを堪能できるはずだった。それが、眩しすぎる朝日をあびて、苦悶に満ちた目覚めを堪能する羽目になってしまった。あぁ、朝日が痛い。 頭が痛いのもヤツの責任だ。何も、あんなにガバガバと飲む必要はないではないか。確かに、昨晩は楽しく、酒もすすんだことであろう。そりゃ、自分はそれで楽しかったのだろう。でも、後から苦労する人のコトも、ちょっとは考えて欲しいものである。こめかみに太い針を刺されたような鈍痛は、私の思考能力と身体能力を完全に奪い去っている。だから、歯ブラシに洗顔料をつけたのも、階段の角に足の小指をぶつけたのも、全部ヤツのせいなのだ。 なんと言っても、気分が悪いのは最悪だ。何もする気がおきない。ヤツが昨日、酒をチャンポンさえしなければ、こんなに気分が悪くなることはなかったはずだ。いくら、他人が美味しそうな酒を飲んでいたからと言って、そんなに色んな種類の酒を飲んでいたら、悪酔いもするはずだ。ヤツは子供の頃からそうだった。全てを試したがるのだ。料理が何種類もあれば、全部味を利きたがり。お菓子のオマケは全種類を集めたがり。人が何かを食べたり飲んでたりすれば、同じ物を欲しがっていた。子供の頃から何も変わっていない。大人になったのだから、ちょっとは自制心というものを活用して欲しいものだ。 あと、酒を散々飲んだ後、お好み焼きを食べる必要はないと思う。それもイカとチーズのトッピングなんて、自殺行為に近いものがある。更に、ビールも一緒に飲むとは何事だ。胃袋が悲鳴を上げて、ストライキを始めたのは当然のことであろう。オマケに、ポケットの中には、アイスクリームを購入したことを伺わせるレシートが紛れ込んでいた。しかもふたつ買っている。一体いつの間に食べたのだ。もう、あきれて何も言えない。 そんなコトだから、当然財布も軽くなっている。本当なら給料日までお金をおろす必要はなかったはずだ。なのに、私の財布には86円しか入っていない。あと一週間以上もあるのにどうする気だったのだろう。それにしても、どうやって帰ってきたのだろう。 でも、それらは些細なことである。それよりも、上着のポケットに入っていた女物の靴下はどうしてくれよう。しかも片方だけ。丈が短くフリルのついた可愛い靴下だ。女性の物と言うよりは、若い女の子の物と言った方がしっくり来る。そんな靴下だ。淡いピンク色が、哀愁を醸し出している。下着ならまだあきらめがつく。靴下であるということが微妙である。 一体ヤツは、何をしていて、こんな物をポケットに入れたのか。身に覚えはないものの、ちょっと想像を巡らせてみただけで背筋が凍る。青少年保護条例なんて、私には縁のないモノだと高をくくっていた。それなのに、今はその言葉が私の頭の中をぐるぐると回っている。ホント、かなうなら殺してしまいたい気分だ。死にたい気分だ。 2003年02月7日 |